Blue Bird の旅

北ドイツでの生活

トロピコカフェ

 

この街にやってきて

初めて入ったカフェ

 

ブンブンと車が走る表通りから

ちらりと見えた看板

 

私がこの街にきたのは

絶望的な理由

 

でも、カフェがあるなら

この街にも住めるかもと思った

 

そしてほんとうに

このカフェがあるから

この街にいるのかもと思う

 

 

土曜日の朝

ゆっくりと起きて伸びをして

さてどうしようと考えると

 

トロピコカフェでメロンパンを食べながら

紅茶を飲む、という案がうかぶ

 

それが思い浮かんだら、

もうそれを実行するしかない

 

トロピコカフェでは手作りのパンが並んでいて

自分で好きなものを選んで

カウンターへ行く

 

いつもいる明るく美人な店員さんに

ホットティーを頼む

 

カフェのマスターは

多分ジャズが好きで

私の好きなダイアナクラールや

トロンボーンのコンボが流れていて

マスターの心の内側にいるような気持ちになる

 

お気に入りの席に座り、

大好きな曲を聴きながらメロンパンを

かじる瞬間

「パーフェクト」とアクセルがいうみたいに

まさに最高の幸せが訪れる

 

完璧な幸せ

 

っていうのは瞬間の事なのかも

と近頃思う

 

 

トロピコカフェは

地域の人が集まるコミュニティになっていて

常連さんどうしで話してたり

「最近こなかったね、ひさしぶり」

なんて会話が聞こえてくる

 

チェーンのお店ではありえない

ほんとうの「お店」の姿

 

高級店でなくても

マスターの顔が見え

思いが伝わってくるお店

 

ありそうで意外とない

最高に素敵なカフェが西巣鴨にはある

 

オシャレなカフェもいいだろう、

でも居心地がいいのかはまた別のこと

 

空間全体に思いやりがあること

そして人を受け入れる懐があること

 

有名シェフのこだわりのお店もいいだろう

でも排他的なこだわりはいらない

 

飾りっ気がなくて

必要最低限で

便利ででも

力が抜けていて

なんとなく暖かくて

 

とても都会的な街なのかもなと思う

 

傷ついた私を

賑やかな光で照らすわけでもなく

深い静けさで窒息させるわけでもなく

雑踏の中に溶け込ませてくれた

 

私に十分悲しむ時間を与えてくれた

 

ありがとうありがとう

 

トロピコカフェと西巣鴨